ベーカリーがAI導入の前に考えたい、「そもそも必要な仕事とは何か」

ベーカリーの業務改革を、AI導入から逆算しない

AIやセルフレジ、さまざまな自動化技術が、ベーカリーをはじめとする小売の現場に入りつつある。こうした技術を前に、多くの企業がまず考えるのは「何を自動化できるか」だろう。

しかし、本当に先に問うべきなのは、別のことかもしれない。

「その仕事は、そもそも必要なのか」

人手不足や人件費の上昇を背景に、小売業では自動化の導入が加速している。これまで人手に頼ってきた業務を機械に置き換え、限られた人員で店舗を運営しようとする動きだ。

Reutersは先頃、韓国の小売業界で進む自動化について報じた。労働人口の減少と人件費の上昇を背景に、カフェや飲食店をはじめとする小売・サービス業で、セルフサービスや無人化の導入が広がっているという。自動化はもはや、単なる業務効率化の手段ではない。人手不足という構造的な変化に対応するための、経営上の選択肢になりつつある 1

だからこそ、AIや自動化を検討するとき、多くの企業はまず、人手のかかる業務から「何を自動化できるか」を考える。

しかし、ここには一つの落とし穴がある。

「今ある仕事は、これからも必要である」という前提に立ってしまうことだ。

既存の業務を前提に「何をAIに任せられるか」と考えるだけでは、そもそもその仕事自体が必要なのか、という問いにはたどり着かない。

もし今日、この店をゼロからつくるとしたら、果たして同じ業務の進め方を選ぶだろうか。

この問いを考えるうえで、示唆に富むのがTeslaのあるエピソードだ。

最も効果的な改善は、工程そのものをなくすこと

Elon Muskは、Teslaの生産初期にあったある出来事を紹介している。

当時、バッテリーパックの上にグラスファイバー製のマットを取り付ける工程があり、その作業には高価なロボットが使われていた。ところが、この工程は安定しない。ロボットの吸着カップがマットをうまく保持できなかったり、接着剤の塗布量を一定に保てなかったりと、さまざまな問題が起きていた。

エンジニアリングチームがまず取り組んだのは、ロボットの改善だった。プログラムを調整し、動作経路を短くし、接着剤の量を調整する。どうすれば、より速く、より安定して作業できるかを考えたのである。

そこにMuskが、極めてシンプルな問いを投げかけた。
「そもそも、このマットは何のためにあるのか」

調べてみると、実はチームごとに、この部品に対する認識が異なっていた。そこで、マットを取り付けた場合と取り付けない場合で実際にテストしたところ、結果は明快だった。マットの有無によって性能に違いはなかったのである。

ならば、必要ない。

マットは取り除かれ、それを扱うために使われていた高価なロボットも不要になった 2

このエピソードから得られる教訓は、「ロボットをどう改善するか」ではない。

そもそも、そのグラスファイバー製のマット自体が必要なかったのだ。マットをなくせば、それを扱うためのロボットも必要なくなる。

業務改善というと、目の前にある工程をより速く、より安く、より正確にすることを考えがちだ。しかし、本当に効果の大きい改善は、工程そのものをなくすことかもしれない。

間違ったプロセスを効率化しても、「ムダ」はなくならない

こうした考え方は、Teslaだけのものではない。
Lean Thinking(リーン・シンキング)が重視するのも、まさにこの発想である。

Leanとは、顧客にとっての価値を起点に業務プロセスを継続的に見直し、ムダを取り除きながら、より少ない資源でより大きな価値を生み出していく経営思想だ。

Lean ThinkingやLean Practiceの普及・研究を行う非営利組織、Lean Enterprise Institute(LEI)は、「ムダ(waste)」を、資源を消費するにもかかわらず、顧客に価値をもたらさない活動と捉えている 3

ここで重要になるのが、テクノロジーとの関係だ。

自動化すれば、それだけでムダがなくなるわけではない。業務の進め方そのものを見直さないまま技術を導入すれば、非効率な仕事を機械に置き換えただけ、ということも起こり得る 4

つまり、ムダをなくすのではなく、「ムダを自動化する(automating the waste)」ことになってしまう。

この問題は、ベーカリーのレジ業務にも当てはまる。

たとえば、店員が商品を一つずつ目視で確認し、POSから該当する商品を探す。商品カテゴリーを切り替えながら探さなければならない場合もある。商品を選択し、場合によっては価格を手入力し、そのほかの操作を経て、ようやく会計が完了する。

ピークタイムに行列ができれば、「レジ担当者を増やす」「POS端末を増設する」「POSの操作性を改善する」といった対策が考えられる。

しかし、これらの対策では、ある一つの前提が変わらない。

店員が、一つひとつの商品を識別しなければならないという前提だ。

もし本当に見直すべきなのが、この部分だとしたらどうだろう。

人員を増やしても、POSを使いやすくしても、既存の業務を効率化しているだけで、業務プロセスそのものは変わらない。

ここに、「業務を効率化すること」と「業務そのものを見直すこと」の違いがある。

プロセスを見直さずに自動化すると、何が起きるのか

自動化を急ぐことで、かえって業務が複雑になるケースもある。

McKinseyが紹介するある企業の事例は、プロセスを見直さずに自動化を進めることの難しさを示している。

あるプロフェッショナルサービス企業は、コスト削減を目的に、社内の業務を担う20人規模のチームの手作業を自動化しようとした。試算上は魅力的な案件だった。業務を自動化すれば、人件費を約60%削減できる可能性があったからだ。

そこで、同社は早々にシステム開発へと進んだ。ところが、実際の業務を詳しく調べてみると、話はそれほど単純ではなかった。

そのチームは数百社の顧客を担当しており、顧客ごとに書類やデータの形式、提出方法などが異なっていた。さらに、5種類を超える異なる入力システムを使っており、それぞれに異なる取引フォーマットが存在していた。

結果として、当初は単純に見えた自動化が、数百通りものパターンを持ち、随所で人の介入を必要とする、複雑で保守の難しいシステムへと変わっていった。

最終的に、この自動化プロジェクトは中止された。問題への対応は、IT部門による従来型のシステム統合へと切り替えられたという 5

この事例が示しているのは、「自動化による効果が大きいこと」と「自動化しやすいこと」は別だということだ。

自動化の可能性に目を奪われ、技術開発を先行させれば、非効率で複雑な、あるいはすでに現在の事業環境に合わなくなったプロセスまで自動化してしまう。

McKinseyが紹介する「process clean-sheeting」は、こうした問題を避けるための一つの考え方だ。既存プロセスを少しずつ改善するのではなく、「もし今、この業務をゼロから設計するとしたら、どうあるべきか」を考える 5

これはベーカリーの業務にも重要な視点である。

ベーカリーの店舗運営は、個々の作業が独立して存在しているわけではない。商品、設備、POS、人員、顧客の行動など、さまざまな要素が相互に関係しながら、一つのオペレーションを形づくっている。

その関係性を見直さないまま自動化を進めれば、問題が解決するどころか、複雑さを別の場所に移しただけになる可能性がある。

一つの作業ではなく、業務全体の流れを見る

Lean Thinkingが個々の作業だけでなく、バリューストリーム(Value Streamを見るのは、そのためだ。バリューストリームとは、顧客の需要が生まれてから、商品やサービスが提供されるまでの一連の流れを指す。

その全体像を可視化する代表的な手法が、Value Stream MappingVSM:バリューストリーム・マッピング)だ。待ち時間、不要な動き、重複、引き継ぎなど、プロセスの中に潜むさまざまなムダを捉えるために用いられる 6

ベーカリーの会計を例に考えてみよう。

「会計に時間がかかる」という問題が起きたとき、必ずしもPOSが原因とは限らない。

見るべきなのは、顧客がパンを手に取ってから支払いを終えるまでの一連の流れだ。

商品はどのように識別されるのか。
その情報は、どのようにPOSへ取り込まれるのか。
どこで店員の作業が発生するのか。
前の工程の制約を補うためだけに存在している作業はないか。

問題の捉え方が変われば、解決策も変わる。

たとえば、
「店員による商品識別とPOSへの入力に時間がかかっている」
と考えれば、POSの操作性を改善したり、スタッフ教育を強化したりする方向に進むだろう。

一方、
「そもそも、なぜ店員が商品を一つずつ識別する必要があるのか」
と問い直せば、まったく異なる業務設計が見えてくる。

プロセス再設計とは、単に既存の仕事を速くすることではない。

誰が、いつ、どのような方法で仕事を行うべきなのかを、改めて設計し直すことだ。

「もし今日、ゼロから始めるなら?」という問い

ここで参考になるのが、McKinseyのいうzero-based approach(ゼロベース・アプローチ)である。

ゼロベースとは、文字通りすべてを捨ててゼロからやり直すことではない。既存の予算、人員体制、ツール、業務習慣などをいったん脇に置き、それらを「変えられない前提」とせずに、今の事業に何が必要なのかを改めて考えるアプローチだ。

たとえば、こんな問いが考えられる。

今も必要な業務は何か。
これらの業務がつくられた当時と、現在では事業規模が同じなのか。
既存のツールやデータは、現在の意思決定に適しているのか。
作成しているレポートは、今も使われているのか。
その会議や定例業務は、今も必要なのか。
「昔からこうしてきた」という理由だけで残っている業務はないか 7

ベーカリーにとって、こうした問いは特に重要だ。店舗には、「ずっとこのやり方でやってきた」という理由だけで残っている業務が少なくないからである。

なぜ店員は商品を一つずつ識別するのか。
なぜ同じ情報を何度も入力するのか。

そして、最も本質的な問いはこうだ。

「もし今日、このベーカリーをゼロから開業するとしたら、既存のシステムも、人員体制も、これまでの業務習慣もない状態で、同じオペレーションを設計するだろうか?」

ここで重要なのは、過去のやり方を否定することではない。

それが今の環境にも、まだ合理性を持っているのかを確かめることだ。

企業にとって最も見つけにくいムダは、明らかな間違いではない。

むしろ、誰も「なぜ必要なのか」を説明できないまま、それでも毎日繰り返されている仕事なのではないだろうか。

AIに任せるべきなのは、プロセスを見直した後に残る仕事

業務プロセスを見直し、本当に不要な工程を取り除いた後に残る仕事。そこではじめて、自動化について考える意味が出てくる。

問いも変わる。
「AIには何ができるか」ではなく、
「どの仕事をAIに任せるべきか」
である。

もちろん、ベーカリーのすべての業務にAIが必要なわけではない。

導入を優先して検討したいのは、頻度が高く、繰り返しが多く、ミスが起こりやすく、なおかつ顧客体験に直接影響する業務だ

その一例が、パンの認識である。

たとえば、顧客が購入するパンが一つひとつ異なる場合、店員はそれぞれのパンを目視で確認し、POSに入力しなければならない。

ここで「最も時間がかかっているのは、店員が一つひとつパンを認識する作業だ」と分かったとする。

すると、次に問うべきなのは、
「なぜパンの認識を、店員が行わなければならないのか」
ということになる。

AI画像認識によってパンを認識し、その結果をPOSへ直接連携できれば、AIは単に一つの手作業を置き換えるだけではない。会計業務そのものを再設計するための基盤になる

ここで初めて、自動化は単なる「作業の置き換え」から「プロセスの再設計」へと進む。既存の業務を少し速くするのではなく、AIを前提に、より合理的な業務の流れそのものをつくり直すのである 8

(出典:ChatGPT)

自動化の目的は、人の時間を再配分すること

プロセスを再設計した後、もう一つ考えなければならないことがある。

「AIが仕事の一部を担ったとき、人は生まれた時間を何に使うのか」

自動化は、必ずしも人員削減を意味しない。むしろ、業務の進め方が変われば、人に求められる役割やスキルも変わっていく。McKinseyの小売業に関する研究でも、自動化によって必要となる人材やスキルが変化することが指摘されている。プロセスを再設計するのであれば、それと同時に、人が担うべき仕事は何かも考え直す必要がある 7

たとえば、AIによって、レジでスタッフが商品を一つずつ識別する時間を減らせるとする。その成果を「レジ担当者を一人減らすこと」だけに求める必要はない。生まれた時間を、顧客への接客、商品の補充、売り場づくり、店舗オペレーションの改善など、人が関わることで価値を高められる仕事に振り向けることもできる。

AIによる自動化の価値は、ここにある。人の仕事を単純に機械へ置き換えるのではなく、繰り返し作業に費やしていた時間を、人だからこそ価値を生み出せる仕事へと戻していく 8

AI自動化の出発点は、テクノロジーではなくプロセスである

AIやセルフレジ、さまざまな自動化技術がベーカリーの現場を変えつつある。そのとき、他業界の事例から学べることは少なくない。

Teslaの事例が示すのは、最も効果的な改善が、工程そのものをなくすこともあるということだ。Lean Thinkingが教えるのは、ムダをそのまま自動化してはいけないということ。そしてMcKinseyの事例が示すのは、自動化に先立ってプロセスそのものを見直すことの重要性である。

だからこそ、ベーカリーがAIや自動化を検討するとき、最初から「どの技術を導入するか」を決める必要はない。まず考えるべきなのは、もっと基本的な問いだ。

「なぜ、この仕事は存在するのか」

価値を生み出していないのであれば、なくせるかもしれない。必要な仕事であれば、やり方そのものを変えられるかもしれない。

そして、プロセスを見直した先で初めて、AIやその他の自動化技術をどう活用するかを考える。自動化の本当の目的は、少ない人数でより多くの仕事をこなすことではない。限られた人材と資源を、より価値の高い仕事へ振り向けること。それこそが、AI時代のベーカリーに求められる業務改革なのではないだろうか。

(本記事は ChatGPT により日本語へ翻訳されました。)
(本記事のカバー画像は ChatGPT の AI ツールで生成されたもので、参考用です。)

[出典]
1 “South Korean shops turn to robots, self-service to escape labour woes.” Reuters. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/south-korean-shops-turn-robots-self-service-escape-labour-woes-2026-07-02/.
2 “The Absurd Reason Why Tesla’s Model 3 Assembly Line Kept Getting Delayed.” Slate. https://slate.com/technology/2018/05/elon-musk-says-a-flufferbot-caused-the-model-3-delays.html.
3 “What is Lean?” Lean Enterprise Institute. https://www.lean.org/explore-lean/what-is-lean/.
4 “Ask Art: Is there a conflict between automation/IT and lean?” Lean Enterprise Institute. https://www.lean.org/the-lean-post/articles/ask-art-is-there-a-conflict-between-automation-it-and-lean/.
5 “How to avoid the three common execution pitfalls that derail automation programs.” McKinsey & Company. https://www.mckinsey.com/capabilities/tech-and-ai/our-insights/how-to-avoid-the-three-common-execution-pitfalls-that-derail-automation-programs.
6 “Lean Thinking and Practice.” Lean Enterprise Institute. https://www.lean.org/lexicon-terms/lean-thinking-and-practice/.
7 “Crafting a fit-for-future retail operating model.” McKinsey & Company. https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/crafting-a-fit-for-future-retail-operating-model.
8 “AI 把重複操作交給系統,讓人發揮真正價值。” Viscovery. https://viscovery.com/zh/how-ai-lets-humans-focus-on-what-only-humans-can-do/.