2024年注目の5つの決済技術トレンド

2024 年 5 月 10 日

テクノロジーの進化とともに、ショッピング体験も進化しています。バーコードスキャナー、ICタグ、AI画像認識によるセルフレジから、複雑なデバイスを組み合わせたAmazon GoのJust Walk Out技術、そしてスマートショッピングカートまで、これらの革新的な技術は私たちのショッピング体験を再定義しています。以下では、これら最新の決済技術の利点と課題についてまとめます。

バーコードスキャンと商品リスト選択によるセルフレジ

セルフレジは多くの小売店で一般的な会計方法となっています。顧客が自分で商品のバーコードをスキャンしたり、画面上のリストから商品を選択してお会計を行うことで、店舗は人員配置を減らすことができます。例えば、セルフレジが2〜3台あっても店員は1人だけで十分です。

しかし、この形式のセルフチェックアウトにはいくつかの欠点もあります。

顧客にとって、セルフレジの利用が必ずしも時間短縮に繋がるとは限りません。バーコードのスキャン自体は難しくないですが、品目が多い場合、一つずつスキャンするのに時間がかかります。さらに、焼きたてのパンのようなバーコードのない商品については、端末で商品を選択する必要があり、操作インターフェースを理解し、リストから商品を探すのにも時間がかかります。

また、複数の顧客がセルフレジで問題が発生し、同時に店員に助けを求めると、店員は対応に追われることになります。これにより店員が疲弊すると、顧客の満足度も低下する可能性があります。

この点については、AI技術によりセルフチェックアウトがよりスマートで効率的になることが期待されます。後ほど、「AI画像認識技術」と「セルフチェックアウト」の融合がもたらす効果について紹介します

(画像出典:Shutterstock)

ICタグ読み取りによるセルフレジ

RFID技術は、より迅速で便利なショッピング体験を提供します。顧客は、ICタグが付いた商品を識別エリアに置くだけで、会計システムが即座に正確に認識し、会計リストを提示します。操作は簡単で、スキャン漏れの防止にも有効です。

しかし、この技術を導入するには、すべての商品にICタグを貼付するための時間と労力が必要です。また、各ICタグ自体もコストがかかるため、現在ICタグ決済を導入している小売業者は、高価格の商品を扱うアパレルブランドが多いです。例えば、デカトロンやユニクロです。一方、H&MやZARAは、店内の商品位置や在庫管理にICタグを活用しています1

▲ デカトロンのセルフレジはICタグを使用しているが、すべての商品を一度に置くのではなく、一つずつ識別エリアに置くことを推奨している

Amazon GoのJust Walk Out(取ってそのまま出る)

Amazon GoのJust Walk Out技術は、小売業界における革命的なイノベーションとされています。

顧客が店内に入るには、まずスマートフォンでAmazonアプリに登録する必要があります。一部のAmazon Go店舗では、入口でクレジットカードやAmazon Oneを使用すれば入店できます2。店内のシステムは店舗に設置された多数のカメラや商品棚の重量センサーを使って、顧客が取った商品を判断します。最後に顧客はそのまま店を出ることができ、一定時間後にスマートフォンで購入金額とレシートを確認できます。

この技術は便利ですが、実用面では多くの課題があります。例えば、設置コストと維持費用が高いことです。また、運営の複雑さ(=維持の難しさ)から、Just Walk Outのスケール化は難しく、迅速かつ効果的に拡大することができません。顧客にとっても、会員登録が必要なことが煩わしく、会員登録やクレジットカードの使用を嫌がる顧客や、クレジットカードを持っていない顧客にとっては障害となり、入店意欲を低下させます。

Amazon Goは2018年に登場し話題を集めましたが、最終的には2023年に9店舗が閉店しました3。さらに、2024年4月には自社のAmazon Fresh生鮮スーパーでJust Walk Out技術を廃止し、全面的にAmazon Dash Cart(スマートショッピングカート)に切り替えると発表しました。

(画像出典:Amazon)

AmazonのDash Cart(スマートショッピングカート)

Just Walk Outのレシートは、決済後しばらくしてから顧客のスマートフォンに表示されるため、多くの消費者はこれに対して安全性の不安を感じます4。さらに、Just Walk Outの設置コストが高く、維持も容易ではないため、Amazonはこの技術の将来について再検討しました。

これを受けて、AmazonはAmazon Fresh生鮮スーパーでJust Walk Outサービスを廃止し、スマートショッピングカートのAmazon Dash Cartを採用しました。Amazon Goと同様に、カートを使用する前にAmazonアプリに登録する必要があります。その後、商品を選ぶ際には、カートのバーコードスキャナーで商品のバーコードをスキャンし、カートに品目を記録させます。同時に価格やプロモーション情報も表示され、ECサイトのカートと同じように機能します。

バーコードがない商品(例えば野菜や果物)の場合、顧客はその商品のPLUコード(Price Look Upコード)を手動で入力し、カートに正確な品目を記録させます。スーパーを出る際は、カート専用の通路を通るだけで済み、消費記録は直接スマートフォンアプリに表示されます5

実際には、この方法は「バーコードスキャンと商品コード入力」のステップをショッピングの過程の中で分散させたものです。

(画像出典:Amazon)

AI画像認識を利用したセルフレジや有人レジのレジアシスト

AI画像認識は、お会計に新たな可能性をもたらします。

AIは様々な商品を迅速かつ正確に認識でき、バーコードやICタグに依存せず、商品コードを手動で入力する必要もありません。すべての商品認識をAIが処理するため、特に包装がなくバーコードもないパンやケーキ、食事などを認識し、会計の効率と利便性を向上させます。また、店舗が従業員にバーコードのない商品を認識するトレーニングの時間コストも削減できます。

▲ AIは複数の商品を一秒で高速識別 (画像出典:Viscovery)

近年では、AI画像認識レジの開発に注力するスタートアップが各国で登場しています。現在、最も軽量なソリューションは台湾で提供されています。レジカウンターにViscoveryのカメラとViscovery AI画像認識アプリを搭載したタブレットを設置するだけで、店舗の既存POSシステムと接続し、即座に利用を開始できます。

この統合方法は多様で、プラグアンドプレイ(挿せば使える)方式もあれば、APIで店舗のPOSシステムと統合する方式もあります。

▲ ViscoveryのAI画像認識システムは店舗の既存POSシステムとシームレスに統合できる (画像出典:Viscovery)

このAIシステムの利用方法はさらに多様で、レジアシスタントとしてだけでなく、セルフレジとしても利用できます。それ以外にも、例えば出前を宅配する前に「配送内容チェック」を行うなど、柔軟に運用する可能性もあります。パンデミックの発生後、出前サイトが急速に成長し、レストランや消費者に便利さをもたらしましたが、時折誤配送が発生します。現在では、店舗は出前の際に店員が確認した後、AI画像認識を使って再確認することが検討されています。

現在、ViscoveryのAI画像認識システムは台湾のチェーンベーカリー「一之軒」、「RT Baker House」、および海底撈グループの麵屋ブランド「ハイヌードル」、日本の仙台百貨店内の社員用コンビニ(マイクロマーケット)、ベーカリー「THE BAKE STORE」、ケーキ屋「うーおの森」などで導入されています。700万件を超える取引はすべてこのAIシステムを通じて行われ、3800万件を超える商品を認識しています。これらの使用事例は、Viscovery AI画像認識システムが小売業界で広く活用されていることを示しており、今後も小売のさまざまな可能性を探索し続けるつもりです。

AIの急速な発展により、各業界が積極的にアプリケーションをアップグレードしています。小売や外食産業の決済方法はセルフモードに限られず、より多くの選択肢を検討できます。店員との対話を好み、人間らしいサービスを好む消費者にとって、AIの応用は店員のサービスをアシストすることができます。セルフレジを好む顧客は、AI画像認識技術を利用してバーコードのない商品を簡単に識別し、商品リストから検索の手間を省くことができます。時間と労力を節約する目的は常に効率の追求であり、AIがもたらす利便性は将来のショッピング体験をよりスムーズにし、ショッピングの新しい時代を迎えることになるでしょう。

AIレジの応用について詳しく知りたい方は、AI画像認識for会計をご参照ください。

▲ ViscoveryのAI認識システムはすでに日本、シンガポール、台湾の違う業種に導入されている (画像出典:Viscovery)

[出典]
1 “H&M Gains as Retailer Shows Early Progress Toward Turnaround.” SML Group, https://www.sml.com/hm-gains-as-retailer-shows-early-progress-toward-turnaround/.
2 “Shopping at an Amazon Go Store.” Amazon.com, Inc., https://www.amazon.com/gp/help/customer/display.html?nodeId=GQKJHZZQDJBQN2QF.
3 Bitter, Alex. “Amazon has closed 9 of its Go stores as part of a strategy overhaul. Here’s the full list.” Business Insider, 24 June 2023, https://www.businessinsider.com/amazon-go-stores-closing-nyc-san-francisco-seattle-2023-3.
4 Associated Press. “Amazon says it is removing Just Walk Out technology from its Fresh grocery stores.” npr.org, 3 April 2024, https://www.npr.org/2024/04/03/1242448552/amazon-remove-walk-out-technology.
5 楊又肇 (Mash Yang). “亞馬遜將旗下Dash Cart智慧購物推車授權給其他零售業者使用,增加更多獲利機會” mashdigi, 28 April 2024, https://mashdigi.com/amazon-licenses-its-dash-cart-smart-shopping-cart-to-other-retailers-to-increase-profit-opportunities/.