足りないのは人手ではなく、単調作業を担ってくれる仲間
自動化は未来の話ではなく、今選ぶべき選択肢

2025 年 7 月 11 日

製パン業界の共通課題

近年、多くのベーカリー店舗が人材採用において共通の課題に直面しています。応募がまったく集まらない、あるいは採用してもすぐに辞めてしまう。求人広告を長期間掲載しても応募はほとんどなく、ようやく面接に至っても、その直後に辞退の連絡が入る──。こうした状況は、都市部に限らず地方の店舗でも広がっています。

一見すると「人手不足」のように見えますが、根本的な要因は仕事内容そのものにあるのかもしれません。単調で繰り返しが多く、達成感を得にくい──。こうした業務の特性が、従来型の店舗オペレーションにおいて、安定した人材確保をますます困難にしているのです。


現場観察:繰り返し作業による心理的負荷と離職圧力

たとえば、日々のレジ業務に目を向けると、店舗スタッフは以下のようなプロセスを繰り返し行う必要があります。

  • 商品名と価格の入力
  • 割引オプションやセット商品の検索
  • レシートの発行と釣り銭の受け渡し
  • お客様からの質問対応や、行列によるプレッシャーへの対処

一見すると単純な業務に思えますが、実際には記憶力や即時の判断力が求められ、ミスも許されません。特にピーク時間帯になると、精神的なプレッシャーやミスのリスクは急激に増加します。このような環境では、離職率が高くなるのも当然です。求職者にとっても魅力に欠け、やりがいを感じにくい仕事となってしまっているのが現実です。

出典:ChatGPT(DALL·Eによる生成画像)

仕事観の変化:「若者が働きたくない」のではなく、「求める仕事内容が変わった」

採用について語る際、「最近の若者は使いづらい」と嘆く経営者も少なくありません。しかし、実際の人材市場の動きを見てみると、働くこと自体を拒んでいるわけではなく、仕事内容に対する期待値が変化しているのです。

  • 常に新しいことを学べる環境を求めている
  • 日々の仕事に発展性や自主性を求めている
  • 高ストレスかつ単調な作業で心身を消耗したくない

これらの志向は一部の若者に限った傾向ではなく、労働市場全体における自然な進化の一環です。店舗業務の設計がこの変化に適応していなければ、人材獲得競争で不利になるのは避けられません。

自動化の価値:人を「代替」するのではなく、「解放」する

人材の確保や育成に疲弊する中で、多くの経営者が気づき始めています。それは、「一部の業務は人が行わなくてもよいのではないか?」ということです。

たとえば、レジ業務。AIレジシステムを導入することで、商品認識・金額計算・レシート出力などのプロセスを自動化することができます。

  • 商品を目視で確認しPOSに手入力する必要がなく、AIがパンやスイーツを自動認識することで、入力ミスの防止につながる
  • POSとレシートプリンターを自動連携し、操作ミスを減らしながら会計速度を向上
  • 統一された商品データベースを構築することで、店舗間の情報共有や販売分析も容易に

こうした業務をシステムが担うことで、現場スタッフは接客や商品案内、店内動線の調整など、より人にしかできない創造的な仕事に集中することができます。これにより、働く側の満足度ややりがいも大きく向上します。

「温かさ」と「効率」は共存できるのか?── 実は表裏一体の関係

テクノロジーの導入に不安を感じる経営者もいます。「サービスが冷たくなるのではないか?」という懸念です。

しかし、実際の導入事例では、テクノロジーが煩雑な作業を肩代わりすることで、人の温かさがより伝わるようになったという声が多く寄せられています。

現場スタッフが入力作業に追われることなく、手や視線を自由に使ってお客様と対話し、商品のストーリーを紹介し、質問に丁寧に答えることができるようになり、結果としてサービスの質と顧客体験の両方が向上するのです。自動化は、人と顧客とのつながりを、より意味のあるものへと導く力を持っています。

導入戦略のすすめ:まずは小さなプロセスから試験導入を

「導入コストが高いのでは」「投資対効果が見込めないのでは」と懸念する店舗もあるかもしれません。しかし実際には、多くのチェーン系ベーカリーが、まずは単一店舗や一つの業務からAIレジシステムの導入をスタートしています。

  • 特定店舗での試験運用からスタート
  • 商品認識用データベースの構築
  • スタッフがすぐに使いこなせるよう、実践的な教育を実施

小規模から始めることで初期コストも抑えられ、効果検証もしやすくなります。その成果をもとに、他店舗や他の業務(棚卸・在庫分析など)への展開もスムーズに行うことができます。

サステナブルな経営のための思考転換

人件費の上昇や働き方に対する価値観の変化により、単調で魅力に乏しい業務スタイルは、今後ますます持続が難しくなっていくでしょう。一方で、自動化技術の進化により、多くの業務が現実的かつ簡単に変革可能なフェーズに入っています。

重要なのは、「テクノロジーが人を置き換える」ことではなく、「人が本当に価値ある仕事に集中できる環境をつくる」こと。これこそが、持続可能で、人材を惹きつける職場をつくる鍵なのです。

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